アスベストが最も飛散する可能性がるタイミングが、解体工事や内装工事になります。石綿障害予防規則や大気汚染防止法では工事のタイミングで、石綿の有無を把握できるようアスベストの事前調査を義務付けています。
アスベストは建物に使用されているいちばん身近な有害物質です。過去に学校アスベスト問題やクボタショックなどアスベストが社会問題化するなかで、法律による規制や啓発活動など様々な対策がされてきました。特に建築物の解体作業やリフォーム、増築工事や修繕工事など工事における飛散事例が多いことから事前調査の重要性が高まっています。
石綿障害予防規則は労働者を保護するために、大気汚染防止法は周辺へのアスベスト飛散を防ぐために共通して、解体など工事前のアスベスト事前調査を義務化しています。健康被害を防ぐためにどこに飛散性のアスベストが施工されているか、非飛散性のアスベストを適切に処理するために事前調査によってばく露防止対策や工事計画を決定する必要があります。これらの調査結果はアスベスト関係書類として40年間の保存義務があります。
建築基準法では吹付けアスベスト使用を禁止しているため、建築物の増改築、大規模修繕・模様替えの際に除去を義務付けています。ただし、床面積の1/2を超えない増改築及び大規模修繕・模様替えの場合に限り封じ込めと囲い込みの措置を許容しています。基本的に解体作業でない工事であってもアスベストの措置が必要となり、アスベストの事前調査で石綿の有無をあきらかにする必要があります。
アスベストの除去や封じ込め、囲い込みは届出、飛散防止、廃棄物の処理と費用がかかります。予期せぬアスベストを発見したため、工事の延期や除去費用の増加など報道もされています。特に外壁や内装に使用されている仕上塗材は、アスベスト対策が必要だと認識してないことが多く、工事直前に変更契約となる事例も出てきています。
自治体など公共機関や民間企業であっても費用が大きくかかる経費については、決済が必要となるため発注者側もアスベストについて確認しておく必要があります。
アスベストに関わる責任は施工会社だけでなく、発注者の責任が大気汚染防止法でも明確に記載されてます。
アスベスト(石綿)の飛散による健康被害については、解体件数が増加していくと予測されていることから社会的に強い関心が寄せられています。これを受けて近年では石綿障害予防規則の改正もされました。
出典:国土交通省 平成29年5月17日 アスベスト対策部会資料より抜粋
建築物等の解体・改修工事にあたっては、大気汚染防止法の規定により事前に吹付け石綿、石綿含有の断熱材、保温材、耐火被覆材の有無を調査することが義務付けられています。また、石綿障害予防規則の第3条の規定より、建築物の解体等を行う際には、石綿の使用の有無の事前調査が義務付けられています。
アスベスト含有の外壁仕上塗材(吹付け工法)が解体・改修工事等の工事時に届出の対象となることが明記され、アスベストの飛散防止対策が強化されています。
一方で、アスベストの事前調査の未実施や不徹底により不適切な工事が行われた事例が報告されています。
アスベストの事前調査の不徹底により、アスベスト建材が把握されずに建築物等の解体等の工事が行われとアスベストが飛散し、工事関係者や周辺住民への健康被害が懸念されています。
建築物の解体・改修工事やアスベスト除去においては、労働安全衛生法、石綿障害予防規則、大気汚染防止法、建築基準法といった規制がかります。日本においては、建築物の解体工事時には目的によって係る規制が異なります。
法規 |
管轄 | 対象 |
吹付け石綿 (レベル1) |
保温材等 (レベル2) |
その他成形板(レベル3) |
規制内容 | 目的 |
労働安全衛生法 石綿障害予防規則 |
厚生労働省 | 解体と除去 | 建築物等に吹き付けられた石綿等 | 保温材、耐火被覆時、断熱材 | 石綿建材等 |
使用等の禁止 石綿含有建材の除去時の対策の規制 |
労働者保護、事業者への規制 |
大気汚染防止法 | 環境省 | 解体と除去 | 特定建築材料※ | ※特定建築材料 |
規制対象外 |
特定建築材料の除去の対策などの規制 |
周辺住民保護 除去工事の発注者、事業者への規制 |
建築基準法 | 国土交通省 |
把握,管理、解体と除去 |
吹付け石綿と石綿含有吹付けロックウール | 規制対象以外 | 規制対象外 |
増改築時の除去等の義務 報告、石綿飛散のおそれがある場合の勧告・命令 定期報告 |
建物利用者保護 建物利用者、管理者または占有者への規制 |
※特定建築材料とは、吹付け材、断熱材、保温材、耐火被覆材のうち、石綿を意図的に含有させたもの又は石綿が質量の0.1%を超えて含まれているものです。
平成26年6月1日 環境省より、建築物等の解体等に伴うアスベスト飛散防止対策が強化された。また、平成26年6月1日 厚生労働省より石綿障害予防規則が改正され、吹付けらえた石綿の除去などの措置、石綿含有の保温材、断熱材、耐火被覆材の取扱が強化されました。
吹き付け石綿等が使用されている建築物等の解体・改修等作業の届出義務者が、「工事の施工者」から「工事の発注者又は自主施工者」に変更されました。
発注者が14日前までに届出をする必要があります。
これまで工事施工者任せにして、発注者が知らなかったと言い逃れができないように改正されています。
アスベスト除去費用についても発注者が費用を負担しないケースがあり、飛散事故につながる事例があることから事前調査を発注者側でできるだけ把握して予算を確保しておく必要があります。
※吹付け石綿、石綿を含有する断熱材、保温材、耐火被覆材が使用されている建築物等の解体等工事作業が対象
建築物の解体等工事の受注者及び自主施工者は、アスベストの使用の有無について事前に調査し、その結果を解体等工事の場所に掲示しなければなりません。
解体工事の受注者は、発注者に対して事前調査の結果を書面で説明しなければなりません。
※特定粉じん排出作業の届出が必要な場合には、届出事項の説明も必要になります。
(2)-2事前調査の説明
受注者及び自主施工者は、アスベストの事前調査の結果及び届出事項(特定粉じん排出等作業届出など)を、工事の開始前までに発注者に書面で説明する必要があります。
※届出事項は、該当する場合になります。
【説明事項】
※5~11については、特定粉じん排出等作業の届出が必要な場合
【掲示内容】
※5~10については、特定粉じん排出等作業の届出が必要な場合
(2)-3調査結果の掲示
解体工事の受注者又は自主施工者は、アスベストの事前調査結果を工事場所の公衆に見やすい所に掲示しなければなりません。
都道府県知事等による報告徴収の対象を、「届出が必要な解体等工事の特定工事の施工者」から「届出がない場合を含めた解体等工事の発注者、受注者又は自主施工者」にまで拡大されました。また、立入検査の対象も同様に「届出の必要ない場合の解体等工事に係る建築物等」まで拡大されています。
アスベストの事前調査の一連の流れは下記のフローようになります。
①解体・改修時のアスベスト事前調査
②石綿使用実態調査時のアスベスト調査
解体前・改修前のアスベスト事前調査はレベル1~レベル3まで全ての種類の建材を確認する必要があります。また、調査時の建物使用状況にもよりますが、隠蔽部を確認する破壊調査等を実施する必要があります。通常の確認調査より詳細な調査になりますので、以下の書類があると正確な調査を実施することができます。
上記の書類が無くても調査自体は可能ですが、使用している建材名や仕上げが不明の場合は分析かみなしによって石綿の有無を判断します。建材の廃棄費用の増大や分析費、除去工数にも影響がでますので、できるだけ書類の提出をお願いいたします。
解体等の工事時に行う事前調査については、「建築物等の解体等の作業及び労働者が石綿にばく露するおそれがある建築物等のおける業務での労働者の暴露防止に関する技術上の指針」に基づいて実施する必要があります。
下記の①~⑤の事について、注意が必要になります。
石綿の有無について、書面調査・現地調査(目視、設計図書による調査)を的確にできる者が行う。
※設計図書等の整合性を現地調査と照らし合わせて確認すること。
※破壊調査などを行って、天井や壁、層間塞ぎなどの隠蔽部の確認を行う。
アスベスト分析については、アスベストの有無の分析が的確に出来る者として、下記の分析者が該当します。
事前調査の一連の過程(書類調査➡現地調査➡試料採取➡分析➡報告書)において、しっかり情報伝達を行ない、その際の責任者・指示者を明確にしなければなりません。
主な内容は下記の通りです。
①事前調査の一連の過程に携わる者の間での、判断と責任分担の明確化
②一部解体や改修工事の作業においては、施工責任者から調査責任者に対して作業範囲の適切に伝わるように必要な指示・依頼を行うこと。
③分析者に対して、採取した試料の建材の種類など重要な情報を伝達すること。
解体前アスベスト事前調査の記録については、下記の事項を記録として残されければなりません。
特定建築物石綿含有建材調査者による事前調査、「石綿分析技術者評価事業」Aランクの認定技術者による分析を実施しています。
上記の技術上の指針に記されている注意事項に対応した、資料調査から現地調査(破壊調査を含む)、施工範囲図を含む調査レポート、分析作業とその提案、試料採取まで一貫して調査を実施しています。
また採取作業の安全性確保をするために石綿作業主任者も同時に配置しています。
国土交通省による公的な資格である、特定建築物石綿含有建材調査者が事前調査を実施しています。
JIS A 1481-1によるアスベスト分析は非常に技術者の経験と技術力が問われる分析法となっています。
当社では公益社団法人日本作業環境測定協会が実施している「石綿分析技術評価事業」に参加しAランクの認定技術者によるアスベスト分析を実施しています。
当社の調査対応可能エリアは、山梨はじめ隣接県の長野県・群馬県・埼玉県・神奈川県・東京都まで調査にお伺いいたします。
当社では専門の資格者が調査、試料採取、アスベスト分析、調査報告書まで一貫して対応致します。
事前調査の報告書は発注者及び建築物の所有者ともに、40年の保管が望ましいとされています。事前調査報告書の必要事項は厚生労働省より「建築物等の解体等の作業及び労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における業務での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針」や「石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル」が示されています。
当社では以下の事項を含めた報告書を作成しています。アスベスト事前調査は添付資料や確認写真など非常に作成書類が多くなります。
当社の事前調査時に作成している報告書の一例になります。
建築物の解体等工事の受注者及び自主施工者は、アスベストの使用の有無について事前に調査し、その結果を解体等工事の場所に掲示しなければなりません。
解体工事の受注者は、発注者に対して事前調査の結果を書面で説明しなければなりません。
※届出が必要な場合には、届出事項の説明も必要になります。
※上記画像はアスベスト事前調査結果の例になります。様式は日本建設業連合会のHPにありますのでそちらを利用して下さい。