内壁・外壁仕上塗材のアスベスト分析調査


建築物等の内外壁仕上塗材として使用されているリシン吹付けや弾性塗料、じゅらく等にアスベストが含有されていることがあります。建築物等の解体・改修・補修工事においては、アスベスト含有の仕上塗材の除去作業には、隔離養生等が必要になり、費用・工期に大きな影響を及ぼします。


仕上塗材のアスベスト分析調査-目次-

1.内外壁仕上塗材に含まれるアスベストについて

主な仕上塗材・下地調整材とアスベスト

内外壁仕上塗材の層別アスベスト分析について

仕上塗材のアスベスト建材採取について

一般住宅の建築用仕上塗材の施工について



1.内外壁仕上塗材に含まれるアスベストについて

 建築用の仕上塗材は主に外壁部分や和室、階段裏等に施工されています。仕上塗材の特徴として資料調査や目視調査でアスベストの有無を判断することが難しく、基本的に層別でアスベスト含有を判断するJIS A 1481-1のアスベスト分析調査を実施する必要があります。

 平成29年3月に厚生労働省より、石綿飛散漏洩防止対策徹底マニュアル[2.10版]に仕上塗材に含まれるアスベストの取り扱いについて追記され、仕上塗材のアスベスト調査・アスベスト分析の需要が近年高まっています。

厚生労働省から示された建築用仕上塗材のアスベスト含有の届出基準

平成30年1月29日に厚生労働省から「石綿含有建築用仕上塗材の石綿則等の適用について」の資料が出されています。

 

具体的な内容としては

  • 吹付け工法で施工された仕上塗材にアスベストが含まれていると石綿障害予防規則の届出対象となる
  • 仕上塗材は複数層で構成されている。その中の下地調整材等は基本的に吹付け施工ではないため届出対象ではない
  • 設計図書等で下地調整材が吹付けされた蓋然性が高い場合、吹付け施工として取り扱う
  • 吹き工法で施工が不明な場合には、吹付け石綿として取扱う(届出対象)

 石綿障害予防規則では、吹き付けられた石綿に規制がかかっています。吹付工法が採用されている場合において届出やレベル1相当の対策が必要になります。ローラー塗り等の工法であっても、湿潤化や手作業での作業となるためアスベスト飛散防止対策は必要になります。

施工方法と関係法令について

建築用仕上塗材

施工方法

労働者が暴露するおそれがある建築物への対応

(石綿障害予防規則第9条)

解体・改修時

(石綿障害予防規則)

(大気汚染防止法)

 吹付け工法

隔離、飛散防止、除去の措置

通常の状態では飛散しない

工事の際に届出

隔離作業が必要

吹付け工法以外

(ローラー塗り等)

届出は特に必要なし

作業前に把握及び飛散防止対策が必要

工法が不明

隔離、飛散防止、除去の措置

通常の状態では飛散しない

工事の際に届出

隔離作業が必要

詳細の通知は以下のファイルをご参考下さい。

ダウンロード
厚生労働省:石綿含有建築用仕上塗材の石綿則等の適用について
平成30年1月29日に示されたアスベスト含有の建築用仕上げ塗材の届出をどう取扱うかの資料となります。
石綿含有建築用仕上塗材の石綿則等の適用について.pdf
PDFファイル 89.6 KB

2.主な仕上塗材・下地調整材とアスベスト

 アスベストが含まれている外壁仕上塗材は、主にリシン・吹付けタイル・スタッコが施工されています。内装仕上塗材で該当するのが、リシン、じゅらくや京壁といった和室の砂壁にもアスベストが含まれている可能性があります。

 届出の対象外ではありますが、下地調整塗材についてもアスベストが含まれていることがあります。レベル3の建材であっても、湿潤化・てばらしによる除去が基本となり飛散防止対策は必要となります。

アスベスト含有仕上塗材・下地調整塗材の概要

塗材の種類 販売期間 石綿含有量(%)
建築用仕上塗材 薄塗材C(セメントリシン) 1981~1988 0.4
薄塗材E(樹脂リシン) 1979~1987 0.1~0.9
外壁薄塗材S(溶剤リシン) 1976~1988 0.9
可とう形外装薄塗材E(弾性リシン)

1973~1993

1.5

防水形外装薄塗材E(単層弾性) 1979~1988 0.1~0.2
内装薄塗材Si(シリカリシン) 1978~1987 0.1
内装薄塗材E(じゅらく) 1972~1988 0.2~0.9
内装薄塗材W(京壁・じゅらく) 1970~1987 0.4~0.9
複層塗材C(セメント系吹付けタイル) 1970~1985 0.2
複層塗材CE(セメント系吹付けタイル) 1973~1999 0.1~0.5
複層塗材E(アクリル系吹付けタイル) 1970~1999 0.1~5.0
複層塗材Si(シリカ系吹付けタイル) 1975~1999 0.3~1.0
複層塗材RE(水系エポキシタイル) 1970~1999 0.1~3.0
複層塗材RS(溶剤系吹付けタイル) 1976~1988 0.1~3.2
防水形複層塗材E(複層弾性) 1974~1996 0.1~4.6
厚塗材C(セメントスタッコ) 1975~1999 0.1~3.2
厚塗材E(樹脂スタッコ) 1975~1988 0.1~0.4
軽量塗材(吹付けパーライト) 1965~1992 0.4~24.4
建築用下地調整材 下地調整塗材C(セメント系フィラー) 1970~2005 0.1~6.2
下地調整塗材E(樹脂系フィラー) 1982~1987 0.5

2015.8.21日本建築仕上材工業会

出典:日本建築仕上材工業会 http://www.nsk-web.org/asubesuto/questionnaire.pdf


3.内外壁仕上塗材の層別アスベスト分析について

建築用仕上塗材の層別分析
建築用仕上塗材:複層層で構成され、各層ごとに分析

 外壁仕上塗材は、下地調整材、下塗材、主材、上塗材といったように複数層で構成されています。

 複数で構成されている仕上塗材は、どの層にアスベストが含有しているかが非常に重要となります。

 

 仕上塗材のアスベスト分析については、JIS A 1481-1による分析方法を行ない、それぞれの層別に分析を実施し評価します。

※複数層で構成された仕上塗材であっても、1検体として取り扱います。

 

*アスベストの含有は、山梨県内では主に下地調整材、下塗材に含有してるケースが多く見受けられます。

*地域によって検出頻度も異なってきますのでご注意ください。

4.仕上塗材のアスベスト建材採取について

 外壁仕上塗材の採取は、試料の同一性の確認や改修状況から試料採取箇所の判断をします。各層別に採取することは現実的ではなく、躯体の下地材までの全層を一体として採取します。

 また、改修時に上塗りをしている場合については、施工状況からできるだけ全ての塗材を評価できる採取場所を選定することが重要です。

 外壁や内壁の仕上げ塗材は、採取する面によってアスベスト含有の有無がことなるケースがあります。1カ所のみの採取とせずに分析調査を進める必要があります。

 レベル3建材の天井材への仕上塗材の施工の場合には、天井材と仕上塗材を一緒に採取し、それぞれの部位ごとに分析を行い評価します。

 

経験と知識のある専門家がお伺いし、採取箇所の選定を行い、採取・分析・レポートまで一貫した調査を実施します。 

レベル3建材の天井材への建築用仕上塗材の施工事例についても御覧ください。

5.一般住宅の建築用仕上塗材の施工について

 建築用仕上塗材は、公共施設や工場など以外にも、一般住宅や倉庫の外壁や内壁に施工れているケースもあります。ここ最近では、一般住宅の解体前に外壁の建築用仕上塗材の分析調査のご依頼が増えてきています。

 

一般住宅の建築用仕上塗材の施工例

  • 一般住宅の外壁 → リシン吹付け
  • コンクリートブロック造の倉庫の外壁 → リシン吹付け
  • 一般住宅の和室の壁 → じゅらく(京壁)

 

6.内壁の建築用仕上塗材でアスベスト検出事例

 ある学校施設の内壁の建築用仕上塗材の下地調整材部分でアスベストが検出されました。外壁の建築用仕上塗材ではアスベスト検出事例は多くありますが、内壁の建築用仕上塗材の下地調整材部分でアスベスト検出は珍しいケースです。